由井寅子大会長からのメッセージ

生命(いのち)の源、自然農と自然食


私たちは、東日本大震災の被災地に様々な物資をもって震災の1週間後、3週間後…と合計4回ほど行きました。その度に痛感したことは、みなが求めていたものは何よりも水と新鮮な野菜だったということです。災害のみならず世界情勢が不安な昨今、あらためて日本の農業を立て直さないと有事の際に大変なことになると思いました。

今、この日本の食や農業には様々な問題があります。種の問題(F1・遺伝子組み換え)や農薬・肥料による弊害は深刻です。できあいのお惣菜には、化学調味料や防腐剤など添加物が入ったものが多く、子どもたちに安心して食べさせることができないのが現実ではないでしょうか。海外からの輸入野菜・果物などの食料品も同様です。食を見直して、自然の食に変えることで、アトピーや喘息が改善したケースも多々ありました。

生物が共存する日本古来の自然農や自家採種を復活させ、素材を生かした添加物のない自然な食べ物を食べられるようになるために、3月15日、16日、第三回日本の農業と食シンポジウムを京都にて行います。食や農業・環境の改善、そして、健康に生きるためにはどのような生活をしたらよいかを知りたい方は、ぜひお越しください。また、当日はホメオパス(ドイツの自然療法、ホメオパシーの治療家)による難病の症例発表も行います。

私たちの望みは、みなさんが自然農をやれるようになることです。
みなさまが心も体も健康に生きることができますように、そして、自分自身の目的を達成できますように、その契機となりますことを心から願い、みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

第3回日本の農業と食のシンポジウム 大会長
日本豊受自然農株式会社 代表
由井寅子 

おもてなしの心は自然な農業と食から

私は、2011年3月の東日本大震災後に、自然農を徹底してやろうと決意しました。それは、私たち日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)は、震災直後から4回ほど被災地支援に行きましたが、実際被災地に行ってみて、多くの人々が安全な水と野菜を第一に欲していたという事実に直面したからです。

有事の時に、安全な水と食料が最も大事なものになることがわかったので、種からこだわった日本古来の自然農を取り入れ、本格的に野菜をつくりはじめました。

収穫した野菜を添加物を使わずに加工するための地熱と太陽熱を利用して発電するOMソーラーの工場もつくりました。常温で一年間保存がきくようなレトルト食品も開発できました。災害時に備えて備蓄できるように、安全で栄養価が高く、長期間保存できるものをつくりたかったからです。そのために土を自然に戻し、自然な種にして行きました。無農薬・無肥料・種にこだわる豊受自然農法は、野菜には厳しいかもしれませんが、その厳しさと私たちのかける愛情に育まれて、風や雨や夏の暑さにも負けない強い野菜が作られます。ですから、豊受野菜は、熱を加えても型崩れを起こしたり、風味がへったり、栄養がへってしまうことは少ないです。ちなみに水は、塩素のない井戸水を非加熱で利用しています。

昔のことですが、田舎生まれの私にとって、東京での生活やしきたりはとてもストレスになっていました。人間関係に悩むことも多く、そんな時はいつもどこか田舎に行き、自然に身を放下することで私の心の傷は癒されてきました。人にだまされたり、誹謗中傷されたり、人間不信になったりしていた私を、無条件に受け入れてくれたのは、山や海やそよ風や花々だったのです。こうして、農業をやるようになったのも、被災地の現状を見ただけでなく、私の心が自然の偉大さや自然のやさしさを求めていたからだと思います。

自然な野菜は体をつくる大切なものです。また、自然な農業は愛と感謝の心をつくります。私は自然農をやることで多くの心が癒されていきました。黙々と土にひれ伏して、時のたつのも忘れて草を取る時、心が洗われて、辛く苦しい出来事に対しても、感謝の心が芽生えてくるのです。それは、野菜も土も一生懸命生きていて、目をかけた分、手塩にかけた分、しっかりとこちらの愛に応えてくれ、大きく育って行き、雨の日も日照りの日も厳しい環境の中、力強く生きようとしている野菜たちや土たちのけなげさに感服するからです。自然が、上手くやれなかった私、人を嫌う私、自己卑下している私をそのままにすべて受け入れ、包み込まれたような感覚を味わった時、大いなるものに愛され、今日まで生きてこれたことを実感し感謝の気持ちでいっぱいになりました。自然農を通してちっぽけなことにこだわっていた自分が解き放たれ、自然と感応し一体になるときが最高の幸せです。

ここに私の詩を載せます。

「おもてなしの心は自然な農業と食から」


日本の誇りを取り戻すために
自然な農業に戻ろう。
日本の古き良き時代にあった
日本が世界に誇れるものは
おもてなしの心。
それは、相手を慈しみ
想いやる心である。

このような心をもう一度取り戻すために
私は土にひれ伏し
黙々と農作業をする。
土や虫、草、環境を思いやり、慈しみながら
自然の中に身も心も放下し感応すると
そこにあるものは
大自然の織なす命たちの世界。

草もトンボも大根も風も
そして、私も一つになって
命が輝いている。
大地の母に抱かれて
農作業をするときに
本当に幸せだなあと心から感じる。
こんなにも心は自然を欲しているんだ。

そして自分が作った野菜を食べる時、
野菜の命と私の命が融合し、
私の体は喜びにあふれる。
昔、田舎で食べた
懐かしい味とにおいがよみがえる。
体はこんなにも自然なものを欲しているんだ。

自然の農業は私たちの心の癒し
自然の食は私たちの体の癒し
これが、自然からの最高のお・も・て・な・し。

平成二十六年三月八日
由井 寅子